One, Two, Three, Four (Bob James)
1970年代、CTIからリリースされた一連の作品です.CTI時代の Bob James
は、クリードテーラーのサウンドコンセプトを実現するべく、
自分のできる多彩な技法でこれらをリリースしています.
近年の Smooth Jazzの Bob Jamesしか知らない人には、彼の別な側面を
教えてくれます.これら4つの作品はコンテンポラリージャズの技法を
学ぶ人には教科書的な作りとなっています.事実、私(サイト管理者)
が、Vincent Persichett の「20世紀の和声法」を勉強していた当時
この4つの作品は、コンテンポラリージャズの作編曲の技法例として
使用していました.
BJ-1 - ムソルグスキーの曲などを素材として、ジャズの即興演奏
を編曲に活かしている最初の作品です.反対に、現在の Smooth Jazz
を暗示するかのような、Roberta Flack の Feel Like Maki' Love
で美しい Rhodes のソロもとっています.
BJ-2 - 前作と同じようなコンセプトです.The Golden Apple のような
緊迫感あるソロをフィーチャーしたものから、You're As Right As Rain
のような Smooth Jazz サウンドのもの、Dream Journey のような
4度フレーズを多用したドリアンモードの無機的なサウンド
(70年代80年代、ニュース/ドキュメンタリーなどのテーマなどにこの手
の音楽がよく使われました.1曲めの「マルディグラにつれてって」は、
70年代、日本テレビの「テレビジョッキー」のテーマソングでした)
のものまであります.
BJ-3 - Bob Jamesが最近でもよく演奏している Westchester Lady
などが含まれています.この曲は、ミニマルミュージックの手法に
ジャズのアドリブソロをクラスターもしくはオブジェのように扱った
もので、一見ダンス音楽のように聞こえますが、延々続く下降ベース
ラインに、サウンドオブシェの密度を薄くしたり濃くしたりして
緊張感を作り出しています.私見ですが、この曲とこの編曲法は、
ライブ演奏には大編成を必要とするので、やはり CTI の多重録音
の方式のものが効果を出していると思います.
BJ-4 - BJ-1 から BJ-4 までの4つの作品は、後の作品になるほど
軽いサウンドになっています.やはり、 Bob Jamesは現代音楽は
すべて身につけているが、自分としては、あまり好きな分野ではない
という気持ちがよくわかります.
BJ-4 はほとんどの曲がポップミュージックのフォーマットですが、
最初の Pure Imagination のみ、Bob James, Hubert Laws, Art Farmer
のソロと編曲を活かした Smooth系の音になっています.
この、Pure Imagination と BJ-2 にある You're As Right As Rain
は、バートバカラックの Close To You のようなリディアンモードを
多用した、「バカラックフレーズ」の曲です.
Bob Jamesは、一見、簡単そうなソロをとっているようですが、
よく聞いてみると、複雑な音程を駆使した「バカラックフレーズ」で
ソロをとるのが上手い人です.
|