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Contemporary Jazz, Smooth Jazz
音楽の構造的部分について.


1.はじめに

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ここでは、 Contemporary Jazz, Smooth Jazz が、はっきり他のジャンルの音楽と 区別できるよう、音楽の構造的部分について詳しく述べてみたいと思います.
音楽ファンの方だけで、実際に楽器の演奏をされない方や音楽制作に 関っていない方々にはあまり面白くない内容かもしれません.初めにお伝え しておきます.また、このページは、完全な音楽理論や和声学を、 ネット上で無償で教えるようなことは一切行いません.それらは音楽学校 など、きちんとした機関や音楽家などから直接習得すべきもので、 こちらのサイトで、それら音楽を有償で教えられている方々の侵害 をするようなことをするつもりもありません.
しかしながら、きわめて重要な部分と音楽の先生方が見落とされがちな 部分をここで紹介してみようと思います.もし興味があれば、それらに ついて詳しく書かれた書籍などご覧になれば、日頃の音楽の楽しみが より深まるものと思います.
(注:このページの内容は、 Vincent Persichetti 「20世紀の和声法」( 20th Century Harmony ) や、 バルトークの音楽技法(エルネ・レンドヴァイ著、全音楽譜出版)などに基づいています. 専門家の方はそちらの本を読まれることをお勧めします)

そもそも、Jazzの発生のルーツを考えると「どんな様式でも」という 考え方に行きついてしまいますが、何もルールを決めない音楽様式が 進歩的であるという考え方自体、一つの「混沌」という単一形式で 終わってしまうこともあります. 「漠然とした積極性」だけの音楽はここでは述べないことにします. あくまで「積極的な漠然さ..」であるべきです. そのため、ある程度、視点を絞ってお話します.(基本的に12平均律あるいは、 古典調律法などを含む西欧音楽の音組織を中心にしてありますので、それら以外の さまざまな民族音楽様式まではふれていません.ご了承ください)


2.ハーモニーを楽しむ

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歴史的背景のところでも書きましたが、Jazz が他のポピュラー音楽や 19世紀以前のクラシック音楽との明確な違いは、和声学の 方法論が「20世紀の和声法」に基づいている点です. ジャズピアニストのビル・エバンスのピアノの演奏とドビッシーのピアノ曲 を聞き比べてみてください.一部の曲を除いて、あまりにも良く似ている ことに驚かれるでしょう.一部の硬派のジャズファンから、Smooth Jazz は Jazz なんかじゃない..と言われたりもしています. 事実、アメリカの Smooth Jazz の音楽フォーマットの定義に、 「20世紀の和声法」が必ず使われていること..などがあるわけではありません. 単に、きれいなメロディーだから..というような理由で、 バッハやショパンの時代のようなフレーズにR&Bのリズムを借りてきた ようなものまで Smooth Jazz として扱われています. それらの音楽を、Smooth Jazzを聴いたことがないような人に聞いてもらうと、 「これ、Jazz なんですか??」というような返事が返ってきます. そんな理由からでしょうか、Smooth Jazz が Relax Music と呼ばれ る場合もあり、批判的な人もいると思いますが、私は むしろ肯定的で、音楽を楽しむという要素を十分広げていると思います.

Profileのページに書きましたが、私は「色聴」 の感覚があります.これは和音やスケールの音程関係で色や明暗を 感じ取れるもので、オリビエ・メシアンにはこの「色聴」が強くあったと いわれています.ジャズの中でもとりわけ Contemporary Jazz / Smooth Jazz を好まれる方、あるいはクラシック音楽ファンでもドビュッシー、 スクリアビンなど印象派以降の音楽に興味がある人は間違いなくこの 「色聴」の感覚があり、そのスタイルの音楽を好きにさせている 最も重要な要因になっているはずです.そのため、Smooth Jazz は、 最近流行のR&Bのリズムなどが使われていますが、ほとんどの場合 「借り物」であり、メロディー/ハーモニーが楽しみの主要な要素で ある場合が多いようです.

一方、Contemporary Jazz というスタイルは、音楽の抽象的側面を楽しむ ことに徹した音楽です.ECMの音楽を聴けばすぐおわかりになると思いますが 「20世紀の和声法」が最大限使われています.しかし、このサイトのはじめ に書きましたように、それら新しい技法を使いつつ、美しい音、リラックス する音を追求したのが、Contemporary Jazz の中の Smooth Jazzだと思われます. 語弊はあるかもしれませんが、これが本物の Smooth Jazz と言えるでしょう.


3.空間を表現する倍音列システム

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前書きが長くなりすぎましたが、ここで本題です.
今、地球上で演奏されている音楽をいろいろ調べてみると、構造的な部分で 大きく2つに分かれます.(「バルトークの音楽技法」エルネ・レンドヴァイ著による) それらには、倍音音列の2倍3倍4倍..等の音程関係基づくものと基づかない ものがあります.前者の倍音列音程比率に基づくものが西洋音楽の基本を成しています. 後者のものは、5音音階などの民族音楽にそのルーツがあるものになります.
前者の倍音音列音程に基づくものは、古典派クラシック音楽の和声学の本にも、 詳しく書かれていますので詳細はそちらの本などを見ていただきたい のですが、それら倍音に基づいて音の高さを決定していくことが どうして見つかったのか、和声学の本にも詳しく書かれていません.
(注:ここでは、英語音名 C, Bb などの絶対音名で表記します.) 2つの弦の振動がある整数比になったときそれら2つの振動が、あたかも 1つに重なったように聞こえることは、2000年以上も前のギリシャ時代 にわかっていました.自然界の音は、電気的な発振器で作らない限り 必ず倍音というものが含まれていて、それらがあるため 音色などを人間が区別できるのです.弦を振動させると、基音という一番 低い振動数から整数倍の振動数の倍音が同時に鳴り響きます.そしてその 倍音は上の周波数に行くにしたがって弱くなっていきます. 現在私たちが使っている、オクターブという 音程は、振動数が1:2で、その間に12の音程がありますが、 1:2の比率で上の振動数を決めても、また同じ音(C から始まって オクターブ 上の C )しか得られません.この1:2の比率により、1オクターブ という周波数の幅(レンジ)を決めています.さらに、もう一つ上の倍音 は2:3の周波数比の位置にあり、C を基音とするとオクターブ上の C の音の上の G の音になります.この C - G にできる完全5度が 倍音に基づいて、新たな音程を生成できる基になっている音程です. この完全5度を順次手繰っていって、新たにできた音程を1オクターブ 下へ下げて順番にならべると、12の音が得られることになります. ただし、これらは完全に一致しているわけではなく、完全5度を 2セント(2/100)縮めないと、いわゆる平均律にはならないのです. これらを基に考えてみると、ふだん私たちが使っている1オクターブの中 の12の音は自然界の音とその倍音に基づいて決定されている、 「自然の法則」に沿った音であることがわかります.そして それは自然と「平均律」という方法に行き着くことが内包されていたものです. これらは、バルトークの音楽で実証され完成していますし、 George Russell の Lydian Chromatic Concept はこれに沿っています. そういう意味では、「平均律」はオクターブを12等分して「人工的」に 作られたと主張する人がいますが、明らかに「平均律」は「自然の法則」 に基づいたものです.もし正確に述べるのなら、 「自然界の音の倍音列に基づいて、オクターブ中に12の音を設定し (これがピタゴラス音階)、完全5度の音程の誤差を「人為的」に修正 してある音階システム」が正しいでしょう. (この点が、「平均律と純正律の問題」なのですが、 問題になっているのは、「完全5度の音程の誤差を「人為的」に修正」した 部分だけで、12の音を使うことに問題があるのではありません. George Russell の Lydian Chromatic Concept には、この点が述べられて います)

この倍音列に基づく音楽は、地球上で西洋東洋を問わず大昔から使われています. それらは「自然の法則」に基づいているため地域性があまりなく一種の 共通性があります.共通な部分とは、音の倍音が美しく遠いところまで届か ないと、人間は音楽表現の要素として使うことはできません. 物理学の法則で、空気中あるいは物質中は、振動数の高い音ほど遠くへ 届かなくなります.(これを TL損失といいます)そのため、倍音成分 が音楽的に有効になるのは、比較的気温が高くならず、乾燥していて、 音がよく共鳴しやすい地域に発生した民族が生活していた地域になるようです. そのため、ヨーロッパの一部地域、ロシア内陸部やモンゴル、中国内陸 、あるいは、南米アンデス山脈地域などです. このような地域にルーツを持つ民族(彼らが移民した地域も含む)は、 倍音列に基づく音楽を好む人が多いようです. (この問題は結論づけることは難しいですが、地域的な傾向(現象)として は現れているようです)


4.時間を表現するリズム/タイムとパルス

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一方、東南アジアやアフリカなど倍音列音程システムの音楽にはあまり適していない 地域で発達したのは、倍音列の音程関係とはあまり関係のない部分を利用 している音楽やリズムの多様さなどの要素が発達しているようです. それらが、上で述べた西欧の倍音システムと融合して、Jazz が発生したわけです.それら地域の民族音楽は5音音階が利用され、 この部分で世界各地で共通性があるようです. 5音音階自体もピタゴラス音階のはじめの5つの音で得られますが、倍音システム のような「機能性」は全くありません. (詳しくは、松平頼則氏の「近代和声学」、小泉文夫氏の「世界の中の日本の音」参照) 5音音階は、音程の取得方法は倍音列システムと同じなのですが、 完全5度を転回すると完全4度になります.そして、この完全4度を5つ ずつ下降して1オクターブ内に集めると、C D E G A の5音音階ができます. (この完全4度という音程は、下の音の倍音列に上の音は含まれません. そのため完全4度の音程の2音は必ず下の音が音量が大きく聞こえ、 倍音システムの完全5度の音程の2音は、上の音が必ず下の音の倍音列中 にあるため、上の音が音量が大きくなります.) そのためこの5音音階は、4度構成の和音で和声付けされる場合が多く、 日本の三味線や琴の調弦や和音が4度を用いていることも理解できると 思います. この5音音階と4度和声のシステムは、倍音列とは反対にハーモニーと いう概念が全くありません.(と言うより、構築できないと言うべき) ハーモニーは「下の音の倍音列上に新たに音を用意して共鳴させ、 複数の振動数の音を同時に鳴らして色彩感を楽しむ」もので 「空間」を表現していますが、 5音音階は、むしろリズムなどのバリエーションを楽しむことが中心 になっています.こちらは「時間」を表現していると言えるでしょう.

優れた音楽というのは、上の2つの要素が両立しているべきなのです. しかしながら、ミュージシャンも一人の人間ですから、概ね、 倍音列システムを好む傾向の人(ハーモニー人間)と、5音音階を 好む傾向の人(リズム人間)に分かれることが多くなります. これらが、国や民族により音楽傾向として現れているようです.


5.倍音に基づく12音システム

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非常に基本的なことをお話しましたので、Smooth Jazz の世界にあてはめて みましょう.

歴史的背景にも書きましたが、 Contemporary Jazz, Smooth Jazz の音楽構造が他のジャンルの音楽や それ以前のトラディショナルなスタイルのジャズと明確に違いが出て きたのは、1960年前後にモダンジャズのミュージャンンが始めた 「モードジャズ」が発端だと述べましたので、この「モードジャズ」 (19世紀終わりにフランスのドビッシーが 始めた、西洋音楽理論の中の「印象派以降の技法」と呼ばれるものが 基になっています)についてご説明します.

通常私たちは、西欧音楽に基づいてメロディーを作るとき、長音階、 短音階を使います.これらは、C - D - E - F - G - A - B - C (ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド) の音程の中の、F - B にできる三全音(トライトーン)という音程が ( F -> E ) ( B -> C) のように E - C という長3度の音程へ 移行(解決という)することで安定感が得られ、C長調であるという ことを認識できます.これが、古典派クラシック音楽でいうところ の機能和声(調性を確立するための和音とその動き)と呼んでいます. これらは、16世紀から19世紀までヨーロッパで支配的に使用 されてきた音楽語法で、日本にも明治時代に輸入され、日本で 音楽理論といえば真っ先にこの方法だと思われています.ジャズ においても1950年代のビ・バップと呼ばれるスタイルまでの ものは、基本的にこの古典派和声学に基づいています.

ところが、19世紀の終わりごろ、ドビュッシーなど、 フランス印象派の音楽家たちは、この古典派和声学の問題点に気が付き はじめました.それは 「もし、音楽を響きなどハーモニーの美しさやその可能性を優先して 音楽表現をしようとした場合、長音階、短音階ではだめで、 モード(旋法)を使用すべきであること.それも、 倍音列の一番根元から始まるリディアンモードを使用すべきである」 ということに気が付きはじめました.古代ギリシャ時代から、 完全5度という音程が美しいハーモニーを出し、それら を手繰っていって12の音(ピタゴラス音階)が得られることが 既にしられていました.(16世紀から19世紀までの、たかだか3世紀 の間に一時的に忘れ去られていた) これら旋法は、例えば、C長調の長音階の旋律は、Dから始まる ドリアンモードと構成音が同じですし、Fから始まるリディアンモード と構成音が同じなので、同じメロディーの音楽でも、旋法組織 への含ませ方で、たいへん色彩感あふれる音楽として表現できる ようになります. この方式を採用しはじめたのが、1960年代以降のモダンジャズ であり、その手法を発展させたのが、現在の Contemporary Jazz / Smooth Jazz なのです.自明のことですが、モードを採用して表現 するということは、必然的にハーモニー最優先で音楽が聞かれ、 楽しまれる、ということになります.

平均律の元になっているピタゴラスチューニングを見てみましょう. 最終的にリディアンモードになることを実証するために、F root からはじめます.(C長調の構成音は、F root のリディアンと 同じ構成音です) F の音が鳴ると2倍音めは1オクターブ上の F です、3倍音め は、C の音です.これではじめて違う音が出てきました. この C を1オクターブ下げると F と C の間が完全5度になります. では C の音からまた3倍音めを手繰ると G の音です. G を1オクターブ下げ、G の3倍音めを取ると、D です. この順序で次々に手繰っていくと、

                           (Gb) (Db) (Ab) (Eb) (Bb) <-平均律だと同じ
F - C - G - D - A - E - B - F# - C# - G# - D# - A# - F
^                                                    ^
|                                                    |
+----------------- 正確には合わない -----------------+
となって12の音が得られます.ただし、最初のF と最後の F が合わないため、F - C などの間の完全5度を 2/100 縮めると 最初と最後の F が合うようになります.これが、 「完全無欠の平均律」です.
そういう意味では、
F - C - G - D - A - E - B - F# - C# - G# - D# - A# - F
の中の F# - C# - G# - D# - A# - の ような表現は本来 おかしいわけで、F# と書かず、何か別の名前に本来すべき なのです.事実、このピタゴラス音階は日本の雅楽や中国など の音律と全く同じで、それぞれ独立した音名がついています.

最初の F - C - G - D - A - E - B の部分を見てください. 並べ替えると
F - G - A - B - C - D - E となって、リディアンモード になります.ですから、ハ長調のメロディーは、そのまま F のリディアンのメロディーとして利用でき、リディアン としての和声付けができます.メロディーはハ長調 だけど、ハーモニーはF のリディアンになっている というもので、メロディーはC長調で、F のハーモニールート の音から完全5度上の倍音の上を新たなメロディーの ルートとして音楽が成り立っているのです. これは大変美しいサウンドになり、 こういうサウンドが特に最近のスムースジャズで 使われているのです.

2/100補正を入れないピタゴラス配置で、
F - G - A - B - C - D - E にならべたリディア旋法は、
日本の「呂旋法」と全く同じです.さらに、
D - E - F - G - A - B - C にならべたドリア旋法は、
日本の「律旋法」と同じです.


6.長音階/短音階から抜け出そう

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とあるところから、 「Smooth Jazz を演奏したり曲作りで有効なコード進行には、 どのようなものがあるのでしょうか?」という質問をいただいたことがあります.

そもそも「コード進行」というものを使うこと、 (曲の構成/作曲として、コード進行をあらかじめ決めてしまう)は、 それ自体で、普通のポップスや古典のクラシック音楽と全く同じ作曲法になって しまうことになります.ベートーベンが、今ポップスで使われている「コード進行」 のほとんどを発見し使っているので、この世界に新しいものは全くありません. 町で売られている、スタンダードジャズやポピュラー音楽の作曲の教則本など、 ほとんどこれに準拠して作られています.そのため「作曲を勉強した」 「ジャズのコード進行とアベイラブルノートスケール」などは、すべてここから 派生していて、この世界のことしか知らない人がほとんどなのです. (普通の音楽はそれで十分) これらの技法の知識/演奏技能だけしか無い人が、Smooth Jazz のオリジナル を作曲して演奏したりしても、そもそも「和声学的に新しい」音楽にはなっていない ケースが多いのです.このサイトで Pure Smooth Jazz という言葉を使っている のも、それらを区別するためです.

いったい何のためにそのような新しい技法が必要なのか? というと、長短音階だけの世界というのは、基本的に7つの音だけが基本 になっていて、それに「シャープやフラットが付く」という考え方だけなのですが、 20世紀になってから開拓され、12音すべての音を構成要素として 利用することで、新たな音感を形成できることが分かってきました. 「最初から12音がすべてある」という方法からスタートし、それらから導き出せる ハーモニーをいろいろな音程を組み合わせて形成したり、それを「旋法」 としてスケールに(意図的に)配置して、それを使ってメロディーや 和声付けをすると、長短音階とコード進行の世界だけでは絶対に味わえない、 色彩感(実際に脳が色を認知するのを色聴と言う)、 静的/動的緊張感(と弛緩)、無機的感覚、ハーモニーを二重三重に 重ねることで出る、都会的な立体感...などなど、 そういった音楽表現を楽しいと思い、表現したいから..これらの方法 を現代の音楽で利用しているのです.

これらは、20世紀以降、人類が科学技術によって人間の経験が拡張され、 グローバル化された結果、経験できる状態であり、 これらの音楽が、ジャズのみならず、映画やコマーシャル音楽、などにも 使われ、表現の範囲を広めているのです.
Contemporary Jazz /Smooth Jazzを好むという人は、そのような現代の ハイテク世界にいることを好み、音楽表現を含めて、そのような エンターテイメントの世界を楽しみたい..と思っているからなのです.

Contemporary Jazz について Persichetti の「20世紀の和声法」という本を 紹介していますが、この本に「重要なポイント」が書かれているのですが、 例を上げて簡単にまとめておきます.

このサイトの、 PureSmoothJazz CDs  で紹介しているいくつかのCDの曲をよく聴いてみると、 例えば、Ken Navarro のCD( Smooth Sensation )のTime And Loveや、 Kenny G のCD( Breathless ) End of the Night のような曲は、 FM7 - Em7 や、EbM7 - Dm7 のような繰り返しが聞こえてきます. 素人の人が、「ああ、Smooth Jazzは、FM7 - Em7 の繰り返しだけか、 これは簡単だ..」といってマネをしはじめたとします. FM7 - Em7 は、それぞれ、ハ長調の IV(M7) - IIIm7 の和音なので、 ハ長調のメロディーになるのですが、「作曲を長音階を使ってする」 ことしかできないと、結局、「ハ長調の IV の和音と IIIm の和音の構成音 でしかメロディーが作れていない」ケースがたいへん多いのです. 本人は、「ドリアンモード」や「リディアンモード」が何であるか、また、 その音程関係はちゃんと「頭で」知っているのに、実際に「曲を作ってごらん」 とか「アドリブソロをとってごらん」と言っても、そのような音の使い方 が全く出てこないことが多々あります. (このような例は、プロの世界ですら、たいへん多い)

これは、伴奏をしている FM7 - Em7 は、
「あくまで F をリディアンルートとする、12音組織の調中心を固定させる ために、反復して鳴らされているため」なのであって、そこからメロディーを 作る場合、Fのリディアンルートから測って、それぞれ12の音の調的遠近感 を旋律線に自由に組み合わせて作っていかないと、12音を駆使した音楽にはならない のです.
これは、絶対音感が必要なようにも思えますが、F の音が固定されていて、 そこから12の音への音程を自由に取れれば、曲を作ったり、アドリブソロ を取ったりできます. この場合、旋律線が、Fルートから遠隔調になるほど、音程を取るのが 難しくなるので、聴音訓練として、12音の音組織の中の、2つの音を取って できる、それぞれ12の音程を、「調から独立して聞き取れる」ように 訓練します.そして、その「独立した2音の音程」を、メロディーやコード を形成するときの、「最小単位」として、組み合わせ、発展させていく、 という作曲法がとれるのです.「調から独立した、音程」という「音感」 を持つことで、調中心からのイン/アウトによる遠近感/緊張感を作れますし、 単音しか出せないような楽器でソロを取るとき、単音なのに、二重三重 のハーモニーを感じさせるようなフレージングなどもできるようになります. (このような構成法を取ることで、ソロをどのように展開させていくか、 によって、「後から調が決まる」「コード進行が決まる」ということに なるのです.それで、「Smooth Jazzでは、どのようなコード進行が使われるのですか」 という問いには、「答えられない」「決まっていない」と答えるしかないのです. それを「美しく仕上げていく自由」がソロイストに与えられているからです.)

参考例の MIDI ファイルです

  • Sample1 - 20世紀の和声法(Vincent Persicheti)の
    「3度構成の7の和音、9の和音」 の章の方法で書いた簡単なメロディーラインのサンプルです.(旋律線のみ)
    このフレーズには、単純なドミソの和音は付けられません.Peter White や Norman Brown などのソロに、このようなタイプのものがよく出てきます.

    (その他、随時紹介していきます)

(All MIDI files,Sound files (C)2002,Yoshiki Sakai )


7.Smooth Jazz を好む人たちの層とは

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上の、セクション6.と同様、このサイトをよくご覧いただいている方からのご質問 ですが、
「モードジャズに興味を持ち、やりはじめたのですが、それについて書かれた 本や教則本などがほとんど見あたりません.やはり本格的にクラシックの 和声学からやらないといけないのでしょうか..」 というお問い合わせをいただきました.

この内容については、私(サイト管理者)自身も過去に同じような経験があります.
このサイトの、「音楽ビジネスモデル」の
2.「反応のある人」のところへ音楽を的確に届けるために と関連して、少しご説明します.

このサイトで扱っているジャンルとその音楽語法は、「経験則」 に基づいて構築していくアプローチで、この「経験則」が、 人によっていろいろ異なってくるため、なかなかマニュアル化 しにくいのです。それで、初心者向けの教則本などが作りにくいということに なってしまいます。
結局、よくわかっている先生につくことで、「あなたは音楽に対して どのような感覚がある..」、など、自分の音楽的な認識能力を指摘 してもらうことで客観的にわかるようになるのです。(実際、私は過去に そういった「教えられ方」をしていただいたので、身につけることができました)
そのため、先生の側というのは、教える相手がどのような音楽的特性 を持っているかを見抜く能力が必要で、それによって 教える内容や方法を変えないといけないから、なおさらマニュアル化できないのです。
クラシック音楽の方法は、「経験則」とは関係なく、 教則本化しやすいので、一般的な音楽教室ではそれしか教えないというのが状況 なのです.
しかしながら、民謡など、ネイティブな音楽の方が時として人に大きな感動を 与えたりしますが、それらの音楽が演奏される時、人が自分の耳で楽器の音を 聴きつつ、「自分の経験に従って」自分の意志で音を奏でていきます.
ジャズのアドリブソロや、自分で自由に音を並べて作曲できるような 「自由が与えられた」状態での演奏とは、「自分の意志」で音を動かすことになります から、演奏者本人が、音楽表現で、どのような部分に意味性を持たせようと しているのかの「経験則」が明確になります.既に過去の作曲家が作ったクラシック の曲を演奏する場合は、音符が既に固定されていて、それをなぞって演奏 しますから、演奏者自身の意志と「経験則」が現れないことになります.
ジャズでの旋法音楽が、12の音程を順次配置してモードのスケールを構築して 用いていきますが、ダイアトニックな音だけでできる旋法で、

(最も明るい<-------------------中間 ------------------>最も暗い)
リディアン - イオニア - ミクソリディア - ドリア - エオリア - フリジア - ロクリア

という、旋法を構築する際の音程構造で、和声的/旋律的な明暗(場合によっては色も) が表現できる、というのも、そういった人間の感覚の「経験則」から、音楽理論が 成り立っているからです. ここで問題となるのが、この「音程の配置間隔を変えることでモードを作り、 それを用いてハーモニーやメロディーを奏でたとき、万人に対して、同一の 経験則が適応できるとは限らない」ということです.
(ここで記述しようとしていることは、民族に対する差別主義ではありませんので、 くれぐれも誤解されないようお願いします)

具体的な例でお話ししますが、このサイトで扱っているスタイルの音楽を好んで 演奏している人の層を統計的に見てみると、 白人系ユダヤ(ミヨー、バカラック..など)、フランス/イタリアなど のラテン系(チックコリア、トリスターノ、ジョビン..など)の人々が 非常に多いことがわかります.(アメリカ人といってもすべて移民である) (黒人の方々も多いのですが、よく調べてみると、ユダヤ系ラテン系など との混血であったりします) 一方、ミュージシャンの名前でもわかりますが、いわゆる中国、韓国など のアジア系の人々が皆無なのです.日本だけは、少し変わっていて、 私などのように強い興味を示す人がいるという(おそらくの)理由は、 日本の歴史で、過去に「ユダヤ13支族」の1つが日本に渡来しているため、 その遺伝子を受け継いでいる人は、日本人でも、このサイトの音楽ジャンル に興味がある方々が多数おられるのでは、と考えられます. (音楽ビジネスモデルの「ユダヤ問題参考リンク」参照)
例えば、中国には胡弓という楽器があります.弦は2本しか張っていない ので、いわゆる「西欧音楽的な和音」を1人で同時に鳴らすことが できません.(最低3本弦が必要)和音を使用しない代わりに、旋律に 揺らぎを与えたりして独特の演奏をします.
このような例を考慮に入れても、同じ旋法音楽でも、西欧型の12音を用いた 和声的色彩感が音楽表現の重要な部分である、Smooth Jazz が、 上記でご説明しました民族に多く受け入れられている理由というのは、 このような点からでしょう.

日本の場合、「弥生人種」というのがアジア系にあたり、 日本の人口比率の一番多くを占めています.ですから、一般に 「Smooth Jazzは日本で人気が無い」などと言われていますが、 「ユダヤ系日本人」という層が日本にあることをぜひご理解ください. それで、日本の音楽文化は、見方によると非常に西欧的な部分もある と言えるのです.
「音楽ビジネスモデル」の 2.「反応のある人」のところへ音楽を的確に届けるために と併せて、みなさん一度考えてみてください.自分の意図する音楽表現を 習得するには、どうすれば良いか..が見えてくるでしょう.


8.音質の良い電気楽器について

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このサイトの、 お勧めCD(Contemporary) にも紹介したジャズハープ奏者の Lori Andrews の生演奏を聴いて、 第一に印象に残ったことがあります.エレクトリックハープということで、どんな音質 になるのか気がかりでしたが、「限りなくアコースティックなハープのサウンド」 だったのです.それと、ベースの Bart Samolis の弾いていた、James Tyler社 に特注した、アップライト型(ウッドベース)のエレクトリックタイプ (ベースの胴の部分を取り除いて、マイクロフォンを装着し、アンプから音を出すもの) の音も、限りなくアコースティックなサウンドで、ハープの音色/音量と、実によく バランスして、和音のハモリをうまく形成していました.

一般に、電気楽器というのは昔から、むやみやたらに大音量に音量を増幅させたり、 歪ませたり、イフェクターを不必要にかけたりした音楽が多く、 一部の人々には、電気楽器に対してあまり良いイメージを持っていない人が 今でもたくさんいます.これは、そのような音楽的効果が、表現として必要な場合は 意味があるでしょうが、そうでない場合は、不愉快な印象しか聴き手に与えない 場合が多いです.
現在最も効果的な使い方のポイントは、電気楽器は質の良いアンプ やマイクロフォン、スピーカなどを使えば、生の楽器の音だけの場合に比べ、 音質が良い状態で音量的なバランスが取りやすく、演奏会場の大きさに応じて コントロールがやりやすいという点です.
「歴史的背景」のところでも書きましたが、今日、音楽を楽しむ媒体というものは、 CDなどの録音媒体で聴かれる方が、生演奏を聴く機会より何倍も多いですから、 音楽の編曲法というものが、録音媒体で聴かれる条件でベストな状態で響く ように楽器を配置して編曲していきます.
では、電気が無かった時代のオーケストラの楽器配置というものはというと、 音量の小さい楽器は、人数を増やす、手前に配置する、などにより バランスをとっていました.しかし、ベースなどの弦楽器は、正確な音程を 作るのが難しい楽器で、何人もの奏者が、速いパッセージをユニゾンなどで 演奏すると、合わせるのが難しくなります.その点、例えば、ベーシストが エレクトリックベースを使って音量を自由にコントロールできれば、 1人で演奏可能になりますから、そのような問題から解放されます. エレクトリックハープも同じ利点があり「古典的な意味でのハープという楽器本来の 特性に拘束された音楽のためだけに演奏される楽器」ということから解放され、 ジャズのアドリブソロなど、 速いスピードで難しいフレージンクでもこなせるようになります.

このような使い方が、電気楽器の最も意味のある使い方でしょう.
アンプやマイクロフォンの専門的な知識も、 ミュージシャン自身が、自分の楽器の演奏法をより良くするための 音楽技法として、自分で扱えるべきなのです.
この事例として、Lori Andrews のCD作品(Pulling Strings)は大変良い例なので、 ぜひ聴いてみてください.


9.12音システムでのモーダルハーモニーについて

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Vincent Persichetti の「20世紀の和声法」の、「3度構成の和音」と「4度構成の和音」 の章に詳しい内容が書かれているので、興味のある方はそちらをご覧いただきたいのですが、 ジャズでモード(旋法)を使用して音楽を演奏する場合、メロディーラインと それに対する和声付けの両方を考慮して音楽を構築していかないと、豊かな音楽 にはならない場合が多いです.
民謡など、歴史的に自然発生した音楽のほとんどは 「単旋律だけのモードの音楽」ですが、12音システムを使う現代の旋法での 和音の扱いというのは、印象派以前のクラシック音楽の機能和声の考え方と 違って、「あらかじめ何調の、Iの和音なとのかどうか」などを全く最初に考えずに、 長3度と短3度を、3つから5つ程度までの範囲で積み上げて、それぞれ組み合わせ で和音を「人工的」に構築していき、それぞれの組み合わせの和音の響きなどを 人が耳で実際に聴いて「経験的」にそのサウンドの感触を吟味しつつ、 それを音楽構築の「道具」として使っていく方法なのです.
(だから音楽をデザインする、という言い方をするのです)

C E G B の4音の和音 CM7 は、単独で鳴らされた場合、長音階の場合 C長調の I の和音、もしくは、G長調の IV の和音として、機能和声の範疇で 考えられます. もし音楽が厳格に C長調の旋律に沿って メロディーが作られ、和声付けされているのなら、 CM7 の7音の B の音は、本来 C長調の I の和音へ解決するためのドミナント コードの G7 に含まれる F B の三全音の一方であるはずで、B の音が半音 上行して、Cに解決するための音になるはずです.ところが不思議なことに、 倍音成分が豊富で美しく響く良質の楽器(ピアノや弦楽器など..)で CM7 の4声和音を鳴らしてみると(実際に自分で鳴らして、経験的に自分 の耳で聴いて、その響きの感触を観測し吟味する)CM7 の B の音は、 全く、C長調の C の音の導音としての響きには聞こえません. これは、このページの始めのセクションにも書いてありますが、 B の音の完全5度下の E の音が鳴っているため、E の音の第3倍音の位置 に B の音は相当し、C長調での導音としての響きより、E の音 の倍音によって協和で安定な響きになるため、CM7 全体として C と B の間 に長7度という不協和音程を含んでいるにも関わらず、C調のドミソの和音 より微妙な美しい響きが得られるのです.

ピアノは平均律で調律され、 印象派以前の古典音楽を現代の平均律のピアノで演奏すると、ドミソ の和音のミの音程が純正律倍音で得られる音程から、14セントずれている ため古典的な美しい響きにはならないのですが、ジャズをはじめ印象派以降 「20世紀の和声法」で構築された音楽(ドビュシー、スクリアビンなど)は、 不思議と平均律でも美しいハーモニーが得られてしまうのです. (平均律の完全5度は、ピタゴラス音律の完全5度より2セントずれている が、この2セントは、ほとんどビートにはならない協和音程である)

CM7 の和音の「響きの美しさ」を優先して、美しさを活かすようにメロディーを導き 出すと、その旋律線は、長調短調のメロディーの音の取り方ではなく、 旋法的(モード的)なメロディーの作りになる傾向があります.
このような理由から、モダンジャズ以降モードジャズが好まれるようになった 理由もこの点からだと思われます.
Smooth Jazz は、このモードジャズの持つ響きの美しさを追求している音楽 と言えます.(クラウス・オガーマンがクリード・テーラに見いだされ、 Diana Krall の最近の作品までも含めて、長い間好まれているのもこのため)

ジャズのみならずポップスの曲にも良い例があります.
バート・バカラックがカーペンターズのために作った Close To You という 有名なヒット曲がありますが、これが印象派以降の和声を使い、メロディーが リディアンモードで作られたたいへん美しくロマンティックな曲で、多くの有名 アーティストにカバーされています.「20世紀の和声法」などと言うと何か 難しそうですが、古典音楽のロマン派の音楽よりもロマンティックな歌が 作れてしまうのです.
この曲は、7の和音、9の和音などに取り囲まれた、ドミソだけの 和音をドミナントとして使っているユニークな曲です. 通常、クラシック音楽では、ドミソの和音に不協和音を「付け加えて」いく 方向に緊張感(テンション)が発生しますが、この Close to You は、 これとは全く逆に、複雑な和音から音を減らしながらドミソの和音へ向けて、 (逆の)テンションを作る、という方法をとっています.


6曲めが、Close to You
参考:
全くの偶然だったのですが、このセクションを記述していた、 2002年8月24日に、NHK−BS2で、1970年当時のカーペンターズの ライブ映像や、現在のリチャード・カーペンターへのインタビューなど を含めた2時間の特集番組がありました. この番組で、リチャードカーペンターへのインタビューで、たいへん重要 な意見がありましたので、ここに引用しておきます.

「もし、カーペンターズを代表する2曲を上げるとしたら何ですか」
という問いに、
やっぱり、「遙かなる影」(Close to You)と「愛のプレリュード」だ.
と言っていました.
「バートバカラック」からこの「遙かなる影」の曲をもらったとき、 「なんてソフトで不思議な曲なんだ..これは、大失敗か大ヒットか、 どっちかしかない..と思った」 と、インタビューで答えていました.
もう気づかれている方もあると思いますが、リチャードカーペンター自身も 作曲をしますが、カーペンターズ自身が作った一連の曲は、ここで言う 「20世紀の和声法」を使った新しいタイプの曲ではなく、ごく普通 のドミソの和音の長短音階の曲です.
リチャードカーペンターは、 「自分では、Close to you のような曲は書けない.しかし、カーペンターズ として歌と演奏は最高のものだ.当時の多重録音の技術を駆使したから、 ライブより録音(レコード)の方が良いよ」 と言っていました.

(FYI: Amazonで、Close to Youの試聴データが無くなっているようです.

Smooth Jazz の範疇に New Age というジャンルがありますが、New Age は、一般に印象派以前の古典音楽の様式に戻って、ドミソの和音の世界だけで 音楽を(意図的に)構築しているものです.( Narada からリリースされている アーティストは New Age のものです.)



日本語版は、音楽之友社、絶版.(一部大学の図書館参照)
[Amazon で購入する]

このページを熱心にお読みくださっている方々へ:
Vincent Persichetti の本を紹介しているのは、Persichetti 自身や彼の作品を紹介 する目的ではありません.このサイトは、現代音楽の語法についても触れていますが、 あくまでジャズなどポピュラー音楽にエンタティメントとして利用することが目的です. 「20世紀の和声法」は、それらの目的のための種々の手法が書かれていて、 各章末の例題/課題は、参考になります.ただ、Persichetti 自身の曲は、取り立てて 言うほどの曲はあまりありませんが、音楽教育として重要なポイントを課題として こなしていけるようになっています.
特に、前半の、1.音程 2.旋法 3.3度構成の和音 4.4度構成の和音 などは、ポップスなど、一般受けする音楽にも重要な部分です. 「スカボロフェア−、などのようなモードの曲を作曲したくても、どうしても 長調/単調のメロしか作れない..どうすればいいのだ..」
あるいは、
「どこかの楽器メーカの音楽教室でジャズを習ったけど、II-V の アドリブしか教わらなかったし、ほかの方法ができない.モード奏法は 教わったけど、マッコイタイナーみたいな、左手、4度ボイシングに 4度のペンタトニックのアドリブと、あまり意味もないスケールアウト することしかできない.このサイトで紹介している、モードの曲は メロもハーモニーも美しい曲が多いのに...」
など、 困ったときが修得始めです.
後半の章は、かなり複雑で凝った、特別な音楽の場合に利用価値はあります.

あと、モード(旋法)について、よく間違えられることですが、ジャズで扱う 20世紀の和声法に基づくモードの技法は、クラシック音楽などの本にも書かれている、 中世のグレゴリアンモードとは、ドリアやリディアなど名称と音程構造は同じですが、 その用法は同じではありません.グレゴリアンモードでの「ドリア調の曲」は、 ドリアの構成音だけでしか旋律を作りませんが、20世紀の和声法のモード技法は 12音の各音程をモードのスケールとして「組み合わせ法」で順次割り振って、 そのモードのカラーと目的に応じた「経験法による」使い方をします. 調と調中心の「確立のさせ方」が、長短音階の方式とは異なるのです.
詳しくは、Persichetti の本をお読みください.
このような理由のため、音大出の音楽家でクラシック音楽しかやっていないと、 モードジャズはどうすればよいのか、全く手が出せなくなるのです.


10.「色聴」に関する問い合わせへの回答メール掲載

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色聴に関するお問い合わせを、数名の方からいただいていましたので、 メールにてお答えした内容2つを、このページに掲載をしておきます.

筆者のプロフィールにも書いていますが、筆者が作曲編曲を習っている時、 この存在を知りました.この内容は、あくまで「筆者自身の経験」によるものであり、 1つの実例とお考えください.
しかしながら、このサイトで取り上げている音楽様式について、筆者が魅力的である と思う、具体的根拠の1つでもあります.

------------------------------------------------------------------- いただいた、ご質問、その1

>> メシアン、ドビュッシー、ジャズなどが色彩的だと思いますが、私自身は実際に
>> 色が見えたりはしません。実際に色聴があるというのは、音と色とにどのような
>> 関係があったりするのでしょうか?

 色聴は、 本に時々書かれている ことがありますが、実際、書いた本人が経験していない場合、ほとんどでたらめなことが多いです.
 もともと、古代人には多く見られたが、現代、退化してしまっている  人が多いようです.私は、たまたま退化せずに残っていたのでしょう.

 音楽を聴いて、色彩感と脳で関連付けられるのは、  音の絶対的な高さではなく、2つあるいは3つ以上の音程が違う音が  同時に鳴ったとき、あるいはメロディーなどのように、時系列で  連続的に聴かれたとき、前後関係の音程の組み合わせが  影響しているのです.
 私のサイトにも書いてありますが、クラシック音楽の理論を基にした  音楽、バッハから後期ロマン派の音楽や、ごく普通のポップス  には、この色聴に関係するような音使いは出てきません. (転調することで、基音の高さが移動すると、中心音からの 和音の構成音などへの音程が、同じになってしまい、 単一の色彩感にしかならないためです)  具体的には、モード(旋法)を使って、音程を並べて  音階や和音(特に、4声5声の7の和音、9の和音)を作ってそれで曲を  演奏しないとだめなのです.
 ですので、C=ド  の色は、などという、現象は色聴として  は存在しません.これは、視覚の色でも同じことで、  複数のスペクトルが同時に存在して、人が認識できるから  色が認知されるのです.
 (リトミックなどの音当てに、色を使っているのは、全く関係   ありません. あれは、むしろ害悪と思っています.)

>> 音程との相関があるのか?
>> あるモードが色と対応しているのか?
>> 音色と色が対応しているのか?
>> 相関関係はもっと複雑で、曲調によるのか?
>>
>> 教えていただけるとありがたいです。

私のサイトで紹介している、Vincent Persichetti の本や 松平頼則著、「近代和声学」にも書かれていますが、 あくまで、ある中心音からの音程距離の組み合わせによります.

 これは、旋法での一番明るい、リディアンモードと  それの、Iの和音の場合です.

 ちなみに、明から暗への色は、

 リディアン       黄色、あるいは、黄緑
 イオニア        白
 ミクソリディア     ライトブルー
 ドリアン        青紫
 エオリア        赤
 フリジア        茶色
 ロクリア        灰色、
 ディミニッシュスケール 黒

 です.
 リディアで作曲した曲は、朝日が上がってくるような、  「眩しい明るさ」があり、朝日を眺めると、白よりは、眩しい黄色に  見えます.

色聴というのは、のべつまくなしに見えてくるのではなく、 「意識するとわかる」というレベルです. 後天的な感覚ではないので、学習によって修得できるものではないです. しかしながら、上の対応関係は、感覚的再現性があるため、音楽表現 としての意味性を持っています.(おそらく DNA が関係している)

 補足ですが、絶対音感と色聴は、直接関係ありませんが、  色聴を持っている人は、絶対音感がある人の割合は多いですが  、逆に、絶対音感のある人で、色聴のある人の割合は、多くはありません.

 音楽での色彩感にセンシティブなのは、ラテン系、アラブ系、ユダヤ系  の人に多いです.(ジャズをやっている人が圧倒的に多い)
 イギリスなどの白人系、ドイツ系のアーリア人、中国、韓国人  と日本人の多数は、ほとんど無いと思います.
(五音音階だと色彩感を決定している音程の音を含んでいないため、津軽三味線や、  演歌には、全く、和声的色聴という意味での色彩感はありません.)
ドビッシーなど印象派の音楽家が、楽器のハープを特に好きだった ことからも、彼らもこのような感覚があったと思います.

>> モーダルな音楽の中に、色聴を誘発する音の組み合わせが出てくるという話、 >> 大変納得のいくものでした。
>>
>> インドネシアのジャワガムランや、バリガムランなどには、色を感じられ
>> ますか?
>> なんとなく、民族音楽の中では、色を感じる音楽だと思うのですが。

 私の場合に関してだけ言えば、西欧音楽の12音の和声的な組み合わせだけ  に対して色聴があります.12音の音程位置からはずれる、微分音や「ゆらぎ」  は、私の場合には、ほとんど意味がありません.
 あえて言葉を当てはめるなら、「和声的色聴」になると思います.
 一方、12音からはずれた「旋律的色聴」も、他の人にはあるかもしれませんね.

 メシアンが言っていましたが、シェーンベルクの12音音楽は、真っ黒だ、  全く色を感じない、一方、ドミソの和音は、白にしか見えない...と.

 私の場合も、最低、7の和音以上に重ねないと、色としては意味を持ち得ません.
 旋法の音楽でも、4度和声による和声付けの場合は、色としての意味  は無いです.なぜなら、4度構成の和音は和音1つで、特定の調を決定  できないのと、3度構成の和音での、7の和音、9の和音での、短3度と  長3度の組み合わせでの和音の数(7の和音は7種類、9の和音は12種類)  に比べたら、あまりに発展性が無いからです.(完全4度と、増4度の  組み合わせで、増4度を重ねると、オクターブになってしまうためで、  4度の音程は、倍音列を伴っていない)

 そういう意味で、「和声的色聴」を発展させたのは、ダリウス・ミヨーで  それをメシアンが引き継いだと思われます.
 ミヨーが、アメリカで後任をたくさん育てたので、アメリカのポップス  やジャズには、そういう和声付けがたくさん見られると思っています.
その延長上に、現在の Smooth Jazz があります.

--------------------------------------------------------------------- いただいた、ご質問、その2

>> >ホタルの光について調べています。
>> >1.黄緑色の音程は、何でしょうか?
>> > あるいは、和音?
>>
>>  これは、旋法での一番明るい、リディアンモードと
>>  それの、Iの和音の場合です.
>
>これは、基本的に、リディアンモードが黄緑色で、
>そのリディアンモードの音楽の中で、
>Iの和音が特に黄緑色を感じさせるということでしょうか?

 音楽表現としての色彩感は、和音の基音(root)からの倍音列  からはずれて、半音下がるフラットが付く数が増えるほど暗く、  逆に、すべて倍音列の上に乗るものが一番明るく聞こえる  のです.リディアは、その構成音がすべて倍音の上に乗っている  のです.

 Iの和音だから、という意味ではありません.

 前のメールで、ホタルの光について、  ということでしたが、  単に明るい光だから、明るい音、という意味で、音楽表現は  できないように思います.

 もし、ホタルが飛んでいる様子を、印象派の手法で表現するとすれば、  リディアンモードだけだと、かえっておかしくなるでしょう.
 ホタルが飛んでいるところを人間が見られる、ような状況は、  少し薄暗く神秘的な雰囲気の場所、  ホタルの光は、弾く音や、たたく音で表現できない.  アタックとディケイがゆっくりしているので、フルートや  バイオリンのような、楽器を使って、少し暗い  ドリアンモード系の神秘的な、和音の音を背景に、  きらきらした音を、バイオリンやフルートのような楽器で  表現すると、描写ができるように思います.

 これはあくまで、音楽表現として、という意味です.

>> 赤 エオリア
>> 緑 リディアン
>> 青 ミクソリディア
>> と考えてよろしいでしょうか?

 似てますが、決して原色ではないです.
 リディアンは、緑ではないですね.明るい黄色です.
 ミクソリディアも、青緑でしょう.
 青は、むしろドリアンモードです.
 エオリアは、オレンジと茶色が混ざった赤ですね.

>> 例えば、赤→緑→青と知覚させるような音楽を作ろうとすると、
>> GならGのキーで、エオリア→リディアン→ミクソリディアの順序で、
>> 作曲すればよいということでしょうか?

 作曲も、状況によっては同じ手法は使えません.  それほど単純ではないからです.

 私のサイトに紹介している、いくつかのCDの曲で、それぞれのモードの  カラーを良く表現しているものがいくつかあります.

赤だと、
鬼束ちひろ インソムニア のCD、デザインが赤系で統一されています. 実は、鬼束のミリオンヒット曲、「月光」は、短調ではなくエオリアモードに近い 自然短音階で出来ています.偶然かもしれませんが、コカコーラの赤色と、 エオリアモードの赤色、インソムニアのジャケットの赤が良く合っています.

緑は、
ドリアンモードよりは明るく、長音階、あるいはイオニアのイメージの白 よりは青に近いので、ミクソリディアでしょう.
ビートルズの曲に「ノルーウェイの森」という曲がありますが、 あれはミクソリディアです.
もう一つ、緑は、「安堵」「安心」「安らぎ」の意味がありますから、 Bob James の Playin' Hooky のCDジャケットが森の中の緑です. このCDの中に、緑の雰囲気の曲がありそうです.

青は、
明るいライトブルーなのか、暗い青紫なのかで、 違ってきます.青紫なら、夕暮れの都会、のイメージですから ドリアンモードです.「スカボロフェアー」がそうです.
私のサイトにある、 Gregg Karukas の Blue Touch のジャケットが まさしくこのイメージカラーで、Blue Touch はドリアンモードの曲です.

ライトブルー系だと、暗いドリアンモードだとおかしくなり、合いません.

リディアンモードで、明るい雰囲気のもの.
夏の海岸で、眩しい太陽の下、のような雰囲気のある曲.

Ken Navarro のCD In My Wildest Dreams の中の Touch 、 Smooth Sensation CDのタイトル曲 Smooth Sensation あるいは、カーペンターズの Close To You もそうです.


11.音楽コンテンツソフトウェアとしての Smooth Jazz

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Smooth Jazz について、2004年/2005年/2006年中にいただいたご質問の紹介をします.

(Q1)音楽活動のためにバンドを組んでジャズも演奏していますが、最近 Smooth Jazz に興味が出て 来て、Smooth Jazz を演奏してみたい(誰かのコピー)と思うのですが、Smooth Jazz の曲の譜面など、書店/楽器店などで全く見かけません?

(A1)Smooth Jazz は、アニメや映画、ゲームソフトなどと同じく、CDとして パッケージ化された音楽コンテンツソフトで、この著作物としての音楽を販売 することで音楽家が収益を上げる構造のビジネスで、作曲家が別の歌手などに 曲を提供するなど、不特定多数の演奏家/歌手などに対して別の作曲家の作った曲が 演奏されることを目的にした音楽ではないからです. あるSmooth Jazz のミュージシャンのCDに収録された曲は、そのミュージシャン のためだけに存在しているので、楽譜として別に販売する必要が無いためです.

一連のSmooth Jazz のCDを見てお分かりのように、あるCDは必ず特定の ミュージシャン一人の名前になっていて、例えば、 Brian Culbertson Band, Peter White Band などのように、バンドとしてある決まった 楽器担当者がCDの全ての曲を演奏しているわけではありません.
Brian Culbertson のCDは、Brian が曲作り、プロデュース、など、全てを担当しています が、ある曲に対してどのようなミュージシャンを起用するか、あるいは コンピュータの打ち込みにするか、 はCDの録音時に必要に応じて決められるので、 CDリリース後にライブ演奏したりする場合、CD録音時 のメンバがそのままライブに出ることは希です.
そのような理由から、Smooth Jazz のミュージシャンは仲間内での交流がとても フレンドリーで、Brian CulbertsonのCDのギターパートで Peter White を 起用したら、Brian Culbertson は、Peter White のCDにもピアノで参加したり、 など、親しいミュージシャンどうし融通しあっています. 音楽をバンドとして固定されたメンバだけで行う、従来型の音楽は、とかく他の 音楽家と敵対する場合がありますが、Smooth Jazz のミュージシャンには「和の精神」 が活きています.

(Q2)Smooth Jazz は、なぜ「アメリカでだけ」ビジネスとして成功しているのでしょう? 他のポップスなど、例えば英語圏の音楽はアメリカのミュージシャンはイギリスや オーストラリアなどでも人気がありビジネスとして成り立っていますが..

(A2)上にも書きましたように、Smooth Jazz は、バントというユニットがライブハウス に出て聴衆に人気を得る、というビジネスモデルではなく、音楽CDという コンテンツソフトという著作物の売り上げ収益の方が主体であるため、 この音楽CDの制作−宣伝−流通−消費者 のシステムが出来上がっている国でないと ビジネスとして成り立たないためです.
現状で「アメリカだけ」このシステムが機能しています. 最も重要なのは、リリースされたミュージシャンのCDに収録された音楽が どのような音楽か、消費者にくまなく宣伝告知可能かどうかは、 Smooth Jazz 専門FM放送、などのように、「音楽ジャンル専門放送」が 放送法で可能な国であるかどうかということです.
アメリカの放送は、放送局がある特定の信条を持っても良いことを規定しています. 従って、「うちの局は、このジャンルのこのミュージシャンの音楽だけを重点的に放送する」 という自由があります.残念ながら、同じ英語圏でもイギリスなどの放送制度に はありません.

アメリカでこのような音楽ビジネスモデルが主流になってきたのは、
・Smooth Jazz など、比較的少ないリスナー数でも、ミュージシャンが オリジナル曲作り、CD制作会社を自分で持つ、などにより、収益の大半が ミュージシャン本人に還元されるため.
・ライブではなく、音楽CDの場合、それを再生させる機器の産業にも利益をもたらす.
・音楽ファンで高収入なビジネスマンほど、音楽のライブハウスなどに行っている時間が無いので、 自然とCDを購入したり、iPod などで音楽を楽しむことが増える.
・アメリカは車社会で、通勤に車を使うと、仕事の帰りにお酒の飲めるライブハウスに立ち寄る、 などということが無くなる.反面、朝夕の通勤時間帯に車の中で Smooth Jazz FMを 聴いて、お気に入りのミュージシャンの新譜CD情報を取得したりできる.
など...

(Q3)こちらはライブ興行などの企画会社ですが、 アメリカのSmooth Jazzのアーティストから、日本へ行ってライブを行うような仕事が 日本ではなかなか無いがなぜだろう、と聞かれています.
やはりジャズのライブというのは、ジャズのバンドを組んでいてバンド活動をやっている ような人たちを集客対象としてライブを企画したりするべきなのでしょうか?


(A3)結論から申しますと、「プロでない楽器演奏を趣味にしているような人は対象にすべきでない」です.
上の Q1 Q2 に関連していますが、音楽著作物という「知財収入型ビジネスモデル」 のSmooth Jazz で最も理想的なコンシューマとは、

1.音楽著作物であるCDや、最近の音楽ダウンロード購入などを含めて、 毎月定期的に一定の金額のお金を、CD購入などの音楽著作物の新規購入に使っていること.

2.それら新規購入した音楽ソースを毎日一定時間聴くための時間を割いて聴いて楽しむ 習慣を持っていること.これは、仕事中にBGMとして聴いていたり、通勤時間中に iPodを聴いている、なども含まれます.

3.自分の好きなアーティストの新譜情報などを自分なりの方法で情報収集する方法を 知っていて、定期的に情報収集をしていること.これは、アメリカのSmoothJazz のネットラジオを聴いて、自分が好きなアーティストの評判などの情報収集したり 、あるいは新譜情報を得たりする、いわゆる「音楽情報収集」を日常的に行っている

ような人のこと意味します.

一方、ライブ興行の収益構造は、ライブ興行はアーティストが一定時間ライブ 演奏するという、労働時間に対する役務決済であり、ライブ開催のためにかかる 多大な経費のため、興業収入が音楽家自身へ直接還元されないため、 よほど大きな収益が見込まれないと効率の良い利益が音楽家自身には見込まれません.
従って「ライブ興行で利益で得られる条件とは、ライブに出演するミュージシャンが既に有名であり、 ファンがすでにたくさんいて、ライブを開催すれば必ずたくさんの入場者が期待できる場合のみ」です.
(一般に、ライブ興業の収益は、出演する音楽家自身への収益ではなく、ライブ興業 のために「経費」が支払われる先(劇場、ライブハウス、PA業者など) への利益誘導が実際の目的とされる場合が多い)
知名度が無いのでライブを開催して知名度を上げるという方法は、全く逆効果です. なぜなら、収益は音楽著作物の方から得られるわけですから、ミュージシャン自身 ではなく、そのミュージシャン自身が制作したCDなどの「著作物の方」を広める 必要があるからです.
プロでない楽器演奏を趣味にしている人は、その人にとって 楽器演奏を楽しむことのための、「楽器を購入する」「バンド演奏するスタジオ料金を支払う」 などの経費がかかり、楽器メーカや町の練習スタジオや、音楽教室に対する「消費者」にあたります.
音楽を演奏している側ですから「音楽の生産者」のように見えますが「音楽の消費者」なのです. 従ってお金を優先的にそれらに使う必要があるため、意外と音楽好きのように見えて、 著作物である音楽CDなどの購入のためにお金を使っていません.
そのような理由で、音楽著作物収入型ビジネスモデルの音楽家にとって、楽器演奏を趣味にしている人は、 好ましい消費者とはなりえないのです.
アマチュアの楽器演奏を楽しむ人が増えることで利益誘導される先は、 音楽家ではなく、アマチュア向けの楽器メーカや、プロ相手ではない音楽教室などです.

一方、日本では以前から、「新人のバンドをデビューさせるために、先に、ライブハウスなどに 出演させてお客の反応を見てから、デビューさせるかどうかを決める」 という方法がとられていました.
この方法の問題点は、
1.オーディションをしている側が、いわゆる芸能プロダクション関係で、 音楽家をタレントと同格に扱い、テレビ出演なども含めて考慮していること.
従って、ライブハウスでの見栄えが良いかを判断材料にしていること.
2.ライブハウスに出演すると音楽それ自体ではなく、「見てくれ」の方に 意識が移り、聴いて楽しむ音楽としての価値判断が変わってしまうこと.
などです. 現在でもダンス系などのビジュアル系アーティストの発掘には利用されていますが、 音楽そのものに対するファン獲得が必要な音楽ジャンルには本末転倒な方法です.
音楽専門ラジオ放送は、 逆にアーティストの顔が見えないため、 著作物の音楽を広める必要がある、 Smooth Jazz などでは、ファンの意識を音楽そのものに集中させられるのです.

12.音楽家としてのPR技術の必要性について

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「PR会社の時代」PRAP Japan 矢島尚著 という本が2006年に出版され、ベストセラーになっています. PRという概念とその技術は、自分のCDレーベル会社まで持って音楽制作をしている 音楽家にとって極めて重要ですので、 今後グローバル市場化する日本の音楽業界の人もこの本を読まれることをお勧めします.

この著者の会社 PRAP Japan は、 2005年の小泉首相再選時に自民党のPR会社として活躍しました. 一方、 NHKのビジネス英会話 担当の 杉田敏さん はPRAP Japan の副社長です. (杉田さんはPRAP Japan に移られる前、アメリカのオハイオ州立大学で ジャーナリズムを専攻され同地オハイオ州クリーブランドでジャーナリスト としての経験をお持ちです.サイト筆者卒の 鈴鹿工業高等専門学校 は、 オハイオ州立大学 と学術提携しており、一方、杉田さんは、ジャズハープの Lori Andrews が卒業した 米国フィラデルフィアの テンプル大学日本校 の理事( サポーティングメンバ )2007年時点 )

この本と PRAP Japan のサイトにも説明されていますが、日本ではPR(Public Relation) と宣伝(CM)を混同している人がたくさんいるとのことで、 宣伝とは「宣伝の対象を他人が広める」("Buy me")ことで、 PRとは「私はこういう者です..」("Love me")と 自分で自分をアピールすることだと、説明されています.

ミュージシャンが自分で曲作りをしても、音楽CDとしてリリースする会社が ミュージシャン自身がそのCDの原盤の版権を持てない場合、 そのCDは、販売会社から見ると "Buy me" としてしか宣伝できませんが、 ミュージシャン当人が原盤会社まで持って販売できる場合、 ミュージシャン当人が、製品としてのCDに対して "Love me" とPRができることになります.

PRについていくつかポイント(筆者が気がついたこと)を列挙します.

■市場がグローバル化した産業としての「小さい政府」であるところの ハイエク経済学が機能している場合PRは有効である.インフラ経済が発展途上の段階での 「有効需要が常に存在する」ものについて必要なのは「効率追求」で、PRを必要としない.

■PRAP Japan のサイトの企業情報によると、会社設立が1970年となっているが 1970年以前は、米国はインフラ経済が発展段階で物不足の状態でケインズ経済学 による「公共事業と効率追求」であったが、70年以降物余りの状態になり、 外需によって米国経済に利益をもたらすために、 戦後復興した日本を米国の消費国にしようとした. 主に、食料品や資源などの米国依存が始まった時期.

■70年代、米国の経済政策がケインズからハイエクに移行しはじめたが、 日本国内は、政府官僚などのハーバード大学留学などにより、公共事業中心 のケインズ経済学の手法が90年代終わりごろまで続いたため、バブル崩壊 などの問題が発生

■PRAP Japan のPRコンサルティング業界リストの中に、日本の音楽や映画 などのコンテンツ産業が全く含まれていない理由として考えられることは、 米国の音楽産業は、ハリウッドなどアメリカに会社として設立されてはいるが 株主や経営者はイギリス、フランスなど欧州系資本.ニューヨークを本拠地と する米国資本は、いわゆるインフラなどの資源産業が中心.そのため石油製品など を使う化粧品、医薬品、生活資材などが中心.

■1960年代ごろの欧米の音楽は、音楽技法もかなりレベルの高い洗練された ものが多かったが、70年代の後半あたりから衰退して行き、逆に、日米とも 大衆化による「土人の音楽」へ移行していったのは、 音楽などコンテンツ産業の収益それ自体が目的であった1960年代当時は、 音楽制作者は音楽それ自体の質の向上をさせようと努力したが、 インフラ産業が物余りになった70年以降、さらに消費を拡大させるために、 音楽などのエンターティメント産業をインフラ産業の消費拡大のために 利用するようなった.「土人の音楽」は、土人に対してマーケティングなどのPR を必要とせず、「常に需要がある」というケインズ経済学の法則が適応できる. テレビなどの電気製品を売るために、「土人の音楽」の方に市場をシフトさせ、 テレビ番組もバラエティー番組が増えた. 音楽の制作費用を番組制作費やCMなどの宣伝費用を流用するようになったのも この時期から.JASRACが放送業界からの要望によりブランケット方式を始めたのも この時期.SonyMusicや東芝EMIなど、ハードウェアメーカがレコード会社の 株主になりはじめた.(2007年現在これらは逆転し、電気メーカの SONY の株を CBSが持ち始めたこと、東芝の東芝EMI撤退など、60年代の コンテンツ収益モデルに回帰しはじめている) )

■米国でSmooth Jazz1980年代中期から始まったのも、上記のような状況から 音楽家が離反して、独自にCDレーベルなどを持ち、インフラ産業とは無関係に 活動し始めたため.

■米国の音楽産業で、アーティスト自身のPRが市場拡大に機能する理由は、 「市場における機会の平等が(制度的)保証されている」からである. 従って、米国でのプロ向けの音楽教育には、「自分の音楽を自分でどうPRするか」 という技能教育も含まれている. 反面日本では、経済産業省 知的財産コンテンツ専門調査会で、 日本のコンテンツ産業は普通の産業にはなっていないので今後は改革が必要、 と報告されている.
日本の音楽産業もグローバル化を推進させるのなら、放送業界や興業の世界 も構造改革が必要.小泉首相時代に、これらコンテンツ産業の構造改革は 行われていない.(日米投資イニシャチブで、郵政改革などのように 米国から日本への改革事項に含まれていなかったため.ユニバーサルやSONY/BMG, HMVなど米国音楽コンテンツ産業の大半は欧州資本のため)
しかしながら、2005年あたりから国際金融資本のリーダーシップが米国系 から欧州系に移ったため、今後、日本のコンテンツ産業の構造改革も進む可能性が ある.

■今後、日本の放送、音楽、映画などコンテンツ産業の構造改革が進めば、 旧来の日本の音楽業界関係の本など、意味をなさなくなる. 反面、この「PR会社の時代」に書かれた内容の方が、今後は日本の音楽業界 ビジネスの主流になると思われる.

■PRとは「関係性の向上」である、と書かれている.音楽を消費者に提供する場合の 「不適切な関係性」の例:
・仕事で徹夜をしてしまって、寝たいと思っている人には子守歌が適切であるが、 NHKラジオの朝6時30分からのラジオ体操の曲を聴かせること.
・長時間、一人で自動車を運転している最中、車のラジオから聞こえる子守歌.
これらは一般的に常識と思われているが、音楽CDが売れない原因の要因.

■キシリトールが虫歯予防に効果があるとは一言も言っていないのに、 キシリトール製品がなぜ売れたか、の例と
Smooth Jazz は癒し系音楽だとは一言も言っていないのに、Smooth Jazz のCDの 売り上げが伸びる理由は、同じような理由.

■ミュージシャン自身が自分のレーベル会社を持っている場合、 必要であるはずの音楽CDの還流防止法が、日本で反対運動がなぜ起きたのか.
日本のレコード会社は、ミュージシャンが会社を持っていないため、ミュージシャンに 曲の使用料を支払って音楽家とは別の会社が音楽CDを制作販売している. これは、音楽家から見るとPRではなく、宣伝(CM)を外部の会社に委託している ことになり、その会社から見ると "Love me" ではなく、"Buy me" にあたる. CDに添付されたライナーノーツなども、音楽家自身が書いていない. 反面、音楽家自身所有のレーベル会社の場合、自分のCDの曲の解説などは 音楽家自身が自分で書いている. 米国では、音楽家がレーベルを持っているケースが圧倒的に多いので、 音楽CDの還流防止法はアメリカでは音楽家が推奨しているのに、 日本では音楽家から反対運動が起こった.

■ミュージシャン(自身への)のネガティブキャンペーン対策
RoundTripp インタビュー、にある「テレビにわざと出演させ、失敗させる手法」 の手口に乗らないために.

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<追記>(2007/04/07)
筆者は、 2007年「NHK ビジネス英会話リスナーの集い」(2007/03/31) に参加し、初めて杉田敏さんにお会いしました.リスナーの集いということで、 シンポジウムかフォーラムのような形式と思っていましたが、これは その名の通り、「人脈作りの集い」のようです.一緒に出られていた、 田尻悟郎さん(テレビにも最近よく出演されているカリスマ英語教師)は、 エリック・クラプトンなど音楽ファンでもあります.

以下は、ご挨拶の会話です:

酒井:
杉田さん、初めまして、
酒井と申します.私は、「やさしいビジネス英語」の番組が始まった直後の1987年 ごろから1996年ごろまでずっと毎日欠かさず聴いていました. 私は、それ以前から英会話はできたのですが、日本では英語を話す機会が無かったので すが、この番組を欠かさず聴いていたおかげで、今はほとんど不自由なく英語 が喋れるようになりました.今は、仕事の関係でアメリカへよく来ていますが 英会話に不自由はしません.

杉田:
これはこれは、ずいぶん昔、この番組が始まった当時から聴いて下さっているの ですね.とても光栄です.実は、今日、名古屋からお越しになっている方で 番組が始まった当時から現在までのテキストを積み上げたら、ご自身の背丈 ぐらいになったという方も来られています.
いやあ、みなさん熱心なので感心しました.

酒井:
杉田さん、オハイオ州立大学に行かれていましたよね.私の卒業した 鈴鹿工業高等専門学校とオハイオ州立大学は学術提携しています. それと、杉田さんは現在、テンプル大学の理事もされていますね. 実は、私は今、アメリカのLAの音楽関係者といろいろ仕事もしていまして、 Lori Andrews という、ジャズのハープ奏者のご紹介資料とCDなど、 杉田さんに差し上げようと持ってまいりました. この Lori Andrews は、アメリカ、フィラデルフィアのテンプル大学 で音楽教育の学位を取った後、LAでハープ奏者として現在まで 仕事をしていまして、クリント・イーストウッド監督の映画に出演したり、 とてもユニークな活動をしています. このCDは、日本でもリリースして、この会場のすぐ近くにある山野楽器 などにも置いてもらった彼女のCDですが、杉田さんぜひお聴き下さい.

杉田:
オハイオ....ずいぶん昔のことです(笑)
へえ、Lori さんハープ奏者の方ですか.テンプル大学卒の方に面白い人が いるんですね.
酒井さん、私、音楽聴くの大好きなんですよ.
車に乗っている時なんか、しょっちゅう音楽かけてます.

酒井:
先月のビシネス英会話は、ロサンゼルスの大きなショッピングモールで、 集客に音楽のフリーライブなんかを利用している話が出てきてますね. とても面白いです. 私はずっと、ビシネス英会話を聴いていましたが、ビニェットの内容の大半が、 いわゆる商社やアメリカの現地企業での話ですが、最近日本の政府が推進している コンテンツ産業のような、いわゆる音楽/映画業界の話題をビニェットの 内容にしたものはまだ無いですね. これからの番組は、例えば、日本のコンテンツ産業を欧米に売り込むような 人を話題にすることも必要ではないですか?

杉田:
ええ、コンテンツ産業のこともよく知ってます.もちろん、これからの 番組作りで考慮していきたいと思ってます.

酒井:
今日は、たくさんの方が来られていて、時間もあまり無いと思いますので、 お次の方にお譲りします.杉田さん、どうもありがとうございました.

13.売ろうとしているのは音楽なのか人なのか?

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2008年、橋下大阪府知事が財政削減のため、文化事業として財政拠出してきた 市民音楽活動などへの拠出を廃止させようとしていますが、 このような税金による文化事業への財政拠出の根拠は「社会教育法」により 認められているためです.

「社会教育法」とは、概念的には「福利厚生事業」に該当します. 国のインフラがまだ整わない発展途上の場合、人々は仕事としてインフラ整備の事業 に従事する場合が多いです.
工場労働者は仕事を終えた後、レクリエーションのために、バンドを組んで音楽を 演奏したりします.これは、「息抜きのために自分で演奏することそれ自体」が 目的であり、
「そのバンドによって演奏された音楽に対して、価値を認める人がお金を払う」 という商業目的のためではありません.前者が「自分で演奏するという福利厚生」 であり、後者が「商業目的の音楽」です.

国のインフラが整備され発展途上国でなくなると、人々は音楽CDや配信などのように、 聴くためにお金で好きな音楽を購入して入手します.従って、現代の先進国では、 音楽ユーザに好きな音楽を入手しやすい環境を与えることが、最も重要な福利厚生 であり、音楽の生産者側から見て、音楽という著作物の産業振興策にもなるのです.

ここで問題になるのは、
「音楽を聴いた結果、音楽好きになる前に自分で楽器演奏する(習う)ことを 新興させると、本当の音楽好きにはならない」ということです.
(演奏するために、楽器を購入する、音楽を習う、ため、楽器産業に利益誘導される)

レクリエーションや息抜き(ガス抜き)のために自分で音楽を演奏したがる (カラオケで歌いたがる)のに、市販の音楽CD/配信音楽を全く買って聴かない、 ラジオの音楽番組などを聴かない、ような人場合です.

日本の芸能文化は、江戸時代からの歌舞伎のように、ストーリーは簡単ですが、 役者自身が目当てで、歌舞伎を観に来ることが目的であり、 現代の日本の音楽産業も、芸能人など「人」として人気があるかどうかによって CDの売り上げが左右される結果、日本の音楽産業で働いているプロデューサ やA&Rは、音楽を売るためではなく、歌手自身など「人」の方を売るための 仕事をしているのです.
これは、放送番組についても同じことが言えます.
(歌舞伎がテレビに変わったと思えばよい)

日本の音楽や映像コンテンツ産業が国際市場に出て行かないのは、これらのためですが、 反面、アニメのように実際の芸能人という「人」が出ていないため、アニメの内容 (コンテンツ)それ自体が評価の対象になり目的化されるため、海外市場でも評価 されています.
前の12.で、PRは、"Buy me" ではなく "Love me" である、と書いてあります. 音楽を演奏しているバンドや歌手「人」を好き "Love me" にさせようとしているではないか..、 と反論されると思います.
しかしながら、
子供を歌手に仕立て上げ、誰かに作曲させた曲を、その歌手に歌わせているが、 音楽の版権による収入は、その歌手本人ではなく、他人を利している.

あるいは、
福利厚生のためにアマチュアのバンド/楽団に財政拠出しているが、そのお金 は、バンド活動のために楽器購入費に充てられる、音楽教室費用に充てられる. など、他人を利している.

これは、"Love me" (曲の版権収入の無いアイドル歌手.演奏した音楽で収入を得ていないアマチュアバンド.など) を装った "Buy me" (他人を利する)の偽装工作と考えられます.

食文化(食べ物の好み)や言葉(両親が江戸っ子だが、その家族が関西に引っ越し、関西 で育つと周囲が関西弁のため、子供は関西弁になる)など、「刷り込み技術」(洗脳技術) が使える分野ですが、音楽の好みはその人がもともと持っている情報能力のため、 「刷り込み技術」が使えません.
(教育で変えられない.アメリカでは義務教育で音楽を教えていない)

広告宣伝技術は「刷り込み技術」によって成り立っています.

音楽そのものを売る対象にすると、人の好みによって市場を分ける(ジャンル分けする) 必要が出てきますが、刷り込み技術の使えない分野のため、広告宣伝業界というのが 最大の抵抗勢力となるのです.

日本の音楽・映像産業市場が国際化しない理由は、それらの既得権益を失う勢力が、 「国際化させたくない」と思っているためです.
この問題を日本政府がどのように改革していくのかが、最後に残された コンテンツ産業の問題です.
(総務省の放送行政改革などとの関連.広告宣伝産業と関わりの無いNHKの強化など)

(随時更新)


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